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自動運転車の進歩と損害賠償責任

近年、自動運転車の開発が進み交通事故の削減や運転できない人の足としての利用が期待されています。一方で、自動運転車で事故が起こった場合、「損害賠償責任は誰にあるの?」といった疑問が出てきます。現在の損害賠償などに関する法律と自動運転という新しい技術の間で発生するであろう課題について紹介します。

自動車保険料の基本となる「参考純率」を算出している「般社団法人日本損害保険協会」(以下、「日本損保協会」)では、自動運転車での事故における損害賠償責任の問題などの課題について2014年から検討されており、その検討結果が2016年6月に発表されました。その発表資料から一部引用しまとめました。また、比較しやすいように現行法の概要をページ下段にまとめました。
裁判などで必ずしも以下のような判決が下されるということではありませんが、今後の方向性がわかってくると思います。

自動運転のレベルと現行法

自動運転車には、その機能などの内容により1~4までの4段階のレベルが設定されており、早ければ2018年ごろまでにはレベル2が実現すると言われています。
各レベルにおける現行法について日本損保協会で検討された内容を大まかにまとめました。

レベル2の場合

【 結論 】
ドライバーの運転責任は現行と変わらない

システムによる運転が実現されるが、自動運転中であってもドライバーには常に運転責任があることから、対人事故・対物事故ともに、現行(ページ下段にある現行法)の考え方を適用することに問題はないと考えられる。

レベル3の場合

【 結論 】
ドライバーの運転責任は現行と変わらない

システム責任による自動運転となるため道路交通法上もドライバーの運転責任が一定免除されることも想定される。
しかし、自賠法に基づいて考えた場合の運行供用者(「運行支配」し、かつ、「運行利益」を得ている者)は誰かについて以下のように考えられる。

「運行利益」者

ドライバーや当該自動車を事業のために使用している事業者等であり、現行と同じ。

「運行支配」者
  • システムの機能限界時などは、システムからドライバーに運転責任が移譲される。
  • 自動運転中であっても、ドライバーはいつでも運転に介入できる。

以上の点からドライバー等が「運行支配」していると解することが可能と考えられる。
したがい、レベル3における対人事故についても、自動運転中の事故か否かを問わず、自賠法の「運行供用者責任」の考え方(ページ下段に掲載している現行法)を適用することに問題はないと考えられる。

また、対物事故についても、過失に基づき損害賠償責任を負うとの現行(ページ下段にある現行法)の考え方を適用することに問題はないと考えられる。

レベル4の場合

【 結論 】
従来の自動車とは全く違う別もの。現在の損害賠償責任のあり方を議論する必要がある。

無人運転を含む完全自動運転であるレベル4では、ドライバーは運転に全く関与せず、すべてシステムによって運転される。
つまり、レベル4において、「ドライバー」という概念はないことから、レベル4の自動運転車は、従来の自動車とは別のものとして捉えるべきであると考えられる。
したがって、損害賠償責任のあり方については、自動車の安全基準、利用者の義務、免許制度、刑事責任のあり方など、自動車に関する法令等を抜本的に見直したうえで論議する必要があると考えられる。

自動運転車の自動車保険
自動運転の分類・レベル

検討結果に対する所感

「レベル3」に対して現行法の適用で問題ないとした考え方には少し疑問が残ります。特に「運航支配」については、ドライバーが自動運転から手動へと切り替えることができるからと言っても、事故が起こるような瞬間に切り替えるような余裕などあるのでしょうか?
もし、この考え方を適正だとするのであれば、ドライバーの過失責任はないと勘違いして利用されないように徹底した注意喚起が必要だと思います

参考)現行法の損害賠償責任についての概要

対人事故の場合

対人事故の場合、自賠法によりまずは自賠責保険(強制加入)での補償が前提となっています。
自賠責保険では運転者、運行供用者ともに賠償責任が課されています。
賠償責任を免責できる場合もありますが、免責するための要件3つをクリアしなければならず、その要件は運転者、運行供用者側が証明しなければならなりません。現行の自賠責保険は、被害者救済を第一として、事実上、ほぼ「無過失責任」主義が採用されています。

運行供用者=自動車の所有者、使用する権利を有する者、運行利益を得ている者など

対物事故の場合

対物事故の損賠賠償を対象とした保険の加入は任意です(任意保険)。
対人事故と異なり運転者に故意または過失がない場合は、ドライバーに損害賠償責任は発生しません。また、損賠賠償を請求するには、被害者がドライバーの過失を証明しなければなりません。

交通事故 – 加害者の責任
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